2016年のノーベル文学賞はボブ・ディラン氏に決定、しかし本人と連絡がとれないというニュースが流れたのは、折しも、「なるにわ10周年こまつり」のころでした。村上春樹ファンのごとく、ボブをネタによもやま話をしていた我々は、ふと思い立ちました。そうだ、我々もボブに賞をあげよう。ちょうど10周年記念だし、「なにものかでなくてもよい場所」を自称する、なるにわからボブに、「ノーラベル賞」をあげよう。それこそ、どんなラベルを貼られても逃げ続けてしまうボブにふさわしい。
ところが、連絡手段がわかりません。でも、ボブには公式のTwitterアカウントがある。受賞決定の旨をテキトーに英語にして、Twitterで送ろう。ということで、140文字にして、ボブに受賞決定の旨を連絡しました。受賞決定から、わずか20分ほどのことでした。しかし、待てど暮らせど、連絡がありません。ノーベル財団と同じ立ち位置です。仕方ないので、授賞式を12月10日と決め、ひたすら待つこととしました。
その後、ボブがノーベル財団に受賞を受けいれる旨を連絡したとのニュースを聞いて、我々はがっくりきました。きっと、ノーベル賞より、ノーラベル賞のほうが、本人には喜んでもらえると思っていたのに。「そりゃないぜボブ♪」「まったくしけてるぜ、これじゃあんまりだ」と心の中で歌っていました。
ところが、ノーベル賞の授賞式には「先約があって出席できない」とのニュースが。これは、こちらに来るにちがいない。ちゃんと来ても大丈夫なように準備をしようと思い、賞状とメダルを用意することにしました。12月10日当日、我々は大阪城に向かいました。外国人観光客でにぎわう大阪城天守閣。ここに、メダル製造機はありました。30年ぐらい前から稼働しているんじゃないかという機械。ほんとうに作動するのかといぶかしがりながら「2016.12.10 NO-LABEL PRIZE BOB DYLAN」と入力すると、文字制限ぴったり。秀吉のひょうたんマークのまわりに、きちんと刻印してくれました。秀吉好みの金メダル。これで準備は万端です。さらには、自家菜園で育てた田辺大根などの野菜が、副賞として持参されました。カンペキです。あとは、ボブが来るのを待つばかりです。3時間半の大作ドキュメンタリー『ノー・ディレクション・ホーム』を観ながら、ボブを待ちました。迷うといけないので、玄関には、これまたテキトーな英語で、案内表示も出しました。
  
ボブは、インタビューに応えて語っていました。「退屈知らずの情熱家たち」「仲間だと感じた」。きっと、我々へのメッセージです。
 
でも、ボブはとうとうノーラベル賞の授賞式に姿をあらわしませんでした。でも、それが正しいノーラベル賞の受賞のあり方です。ボブが、これからも、どんなラベルからも逃げ続けることを祈念して、私たちもそこに学んでいきます。ありがとう、ボブ。賞状とメダルは保管しておきますので、いつでも取りに来てください。


↑メダルの製造工程@大阪城天守閣