おまけ、というわけではないが、“逆さ男”さんが詩を寄せてくださったので、これも掲載する。
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「部屋の壁」

僕はこの部屋に住んでいる
次の部屋へ引っ越して出ていく時
僕は何を成し遂げているのだろう
レシピを見ながら自炊していた
納豆の臭いを消臭スプレーで消した
朝 仕事の身支度にバタバタした
それ以外で
何を成し遂げているのだろう
誰と一緒に―

次に引っ越してきた人は
部屋に入って来たら
僕の生活の記録である 部屋の壁の
匂いを鼻から吸い込み荷物を運びこむのだ  きっと

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「冬日の雨」

学校帰りの子供達がフードコートのフードを被り 小走りに駈けてゆく
背中をピンと立てながら
家へ帰る僕はジャンパーのファスナーをきつく締め 大股で早歩き
背中は丸まり、顔を下に向けている

突然降りだした雨
傘を持ち出すのを忘れずぶ濡れになって家路を急ぐ

一粒一粒が雪のような重みを持つ
身に沁みる冷たさの 冬日の雨

春雨のようなしつこさとその冷たさが重苦しくて
ただでさえ子供と違い背負う重荷が骨身に沁みるのに
これ以上は耐えられない
潰してはいけないものを
背骨を丸めて守っている しっかと――